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期間のある社員の「期間満了で労働契約終了」は認められるか

2018年2月9日

従業員を雇うとき、たとえば「平成29年3月31日まで」と期間をきめて雇用することがあります。
はじめから「契約の更新はない」と決めており、雇われる側もそれに納得している場合にはあまり問題はないでしょう。

しかし、実際には「期間満了しても再度契約を更新してまた同じ期間で雇う」ことを繰り返す方がほとんどでしょう。
このときも、雇い続ける限り大きな問題はありません。

ただ、何度か契約を更新したものの、何らかの事情で「今回の期間が満了したら、もう更新しない」ということもあります。このような場合、期限が来れば問題なく、「退職」してもらえるのでしょうか。

契約書がなければ話になりませんが、契約書がある場合、経営者の方から「従業員もその契約書にサインしているのですから、契約書通り、期間がくればやめてもらうことに何の問題もないはずだ」とよく言われます。
契約書があるのですから、そう思われるのも当然でしょう。

しかし、裁判所はそのように考えていません。

たとえば、平成27年12月3日に東京高等裁判所で判決があり、話題にもなった裁判がありました。この事例では、契約期間を1年とする労働契約を毎年繰り返してきた学習塾の講師(勤続約20年)と、その雇い主である学習塾側が、平成24年になって「今回の契約更新が最後になります」という文言の入った契約書を取り交わしていたにもかかわらず、裁判所が契約書のその文言に効力を認めず、契約の更新を認めたという事例でした。

この事例では、10年も前から「50歳になったら契約更新しません」という方針を説明し、その説明通り50歳になった塾講師を辞めてもらおうとしていただけであったにもかかわらず、裁判所がその契約の効力を否定したことで話題になりました。

確かに経営者側には酷な判断ですが、このような事例は数多くあります。ただ一方で、裁判所から「使用者側から従業員に十分な情報提供や説明があった」という事例では「契約を次回は更新しない」という契約条項(不更新条項)の有効性を認めています(大阪地方裁判所平成17年12月12日判決の事例など)。
しかし実際にはそのハードルは高く、かなり高度な説明を求められますし(さきほど説明した東京高裁の事例でも、資料を配付して説明会を行っていますから、経営者側もまさか10年後に「十分な説明ではなかった」と言われることになるとは思っていなかったでしょう)、説明をしたというしっかりした証拠も求められます。イメージ的には、経営者の方が想像する「十分な説明」の2倍以上の説明が必要であると思って間違いありません。

「期間を定めた従業員(期間雇用社員)」でも、実際にやめてもらうには一筋縄ではいきません。しっかりした準備が必要です。

私も顧問先の会社で、ある従業員を「期間満了でやめてもらおう」と計画したときには、かなり慎重な準備を行い、最後の契約の際に立ち会ったり、実際にやめてもらう場面で立ち会ったりすることもあります。かなり神経を使う仕事です。

弁護士法人フォーゲル綜合法律事務所
弁護士 嵩原 安三郎